久しぶりに本を読みきりました。
読書は好きですが、どうしてもYouTubeやゲームに心が行ってしまい、しっかり時間をとって読むことが少なく、積ん読が溜まってしまいます。
今回の本は、まさにそんな時のために読む本だったかもしれません。
書籍の概要
限りある時間の使い方
FOUR THOUSAND WEEKS Time Management for Mortals
著:オリバー・バークマン
訳:高橋璃子
かんき出版
内容
イントロダクション
人生は、80歳まで生きるとすれば約4000週間です(80年×50週/年=4000週間)。
運が良ければもう少し長いですが、それでも人生というのはとてもとても短い時間です。
だからこそ時間を有効に使うことが大事になってくるはずですが、本屋を見回して見つける「タイムマネジメント」の本には、そのようなことは全く触れず、タイムマネジメントでなんでもできるといった「幻想」になっています。
昔よりも効率的な機械やテクニックが増えているにも関わらず、現代の人はとても忙しそうです。
洗濯機や電子レンジで省略できた時間は、別のやることリストを消化するために使われています。
時間を思い通りにコントロールしようとすればするほど、時間のコントロールが利かなくなってしまっているのです。
この本は、タイムマネジメントをしてより多くのタスクを片付けましょうという内容ではなく、人生の短い時間をできるだけ有効に使うためのマインドを知ることができるようになっていました。
いくつかの印象に残ったことを書いていこうと思います。
人生のすべては借り物の時間
今これを書いている私も、読んでいるあなたも、生きて何か(タイピングかネットサーフィンか)をしています。
4000週間は短いかもしれないですが、生まれていなければ1週間もなかったはずです。
渋滞にハマること、赤ちゃんがなかなか泣き止まないこと、また皿が汚れていること。世の中にはイライラすることもたくさんありますが、それを体験できる・自分で何かをしているのは奇跡的であり、生きているからです。
そういう視点で限られた時間で何をするかということを考えると、他に何かをするべき時間を犠牲にして、自分で何かをするということを決定していることになります。
このような考え方だと、何かを選択できるということが奇跡的であり、〇〇ができないといった意識を持つ必要はなく、自分で選び取ったやりたいことができているということに嬉しさを感じることができます。
選択肢は少ない方がいい
ハーバード大学で「ポスターを選ぶ」という実験を行いました。
- 一方のグループには「1ヶ月以内に他のポスターと交換可能です」と伝える
- もう一方のグループには「これが最終決定で、一度選んだポスターは決して交換できません」と伝える
この結果、後者の「後戻りできない」グループの方が満足度が高く、ポスターをより気に入っていることが分かりました。
人は後戻りできない状況の方が、選択肢があるときよりも幸せであることを示す実験になっています。
一つ上の内容で自分で選ぶことに嬉しさを感じるとありましたが、同じように「他のことを捨てる喜び」に通じるものがあり、自分の選ばなかった多数の選択肢を捨てるからこそ、自分の選んだものに価値が生まれることになります。
(ちなみに、「結婚」というシステムも、他の選択肢を捨てているということになるようです。)
現実は注意力によってつくられる
あなたの人生とはすなわち、あなたが注意を向けたあらゆる物事の総体である。
人生を最後に振り返った時に、思い出すのは自分がこれまで注意を向けたことの集まりであり、それ以外には何もありません。
「スイカにいくつも輪ゴムをかけていつか耐えきれずに爆発する動画」を見る時は、人生の一部を削ってそれを見ていることになります(かくいう私も、階段からビンを転がす動画とかも夢中に見てしまうことがよくあります…。)。
スイカ動画を見ることが本当にやりたいことなのであれば問題はありませんが、やりたくもないことに注意を向けても、価値がない時間を過ごすだけになってしまいます。
意識的・自発的にコントロールできる注意力をうまく使えるかどうかが、人生の質を大きく左右します。
やりたくないことに時間を割くのではなく、自分がやりたいと思って時間をとる注意力・集中力が人生を豊かにします。
因果のカタストロフィー
子育てのノウハウ本を2種類に大別すると、「しつけ派」と「自然な子育て派」に分かれています。
前者は規則正しい生活をしましょう、後者はスケジュールなんて考えずに大昔と同じようにしましょうという大きな方向性がありますが、いずれも「子供の将来のため」を目的に掲げています。
将来子どもが最善の結果を得るために、今の時間を使いましょうという考え方です。
しかし、「今」の時間は「今」しかありません。
もちろん、予防接種を受けたり、お金のことを考えたり、将来のことを考えることは重要ですが、将来ばかり見過ぎて貴重な「今」を犠牲にし過ぎない方がよいのではないでしょうか。
因果のカタストロフィーとは、「時間を上手く使ったかどうかは、常に結果の良し悪しで判断される」という考え方です。
子どもが大人になった時に、子育てがうまくいったかどうか判断されることになりますが、「今」を楽しく生きることを考えてもよいのではないでしょうか。
まだ自信がないからと尻込みしている分野は何か
僕は思うのだけれど、大人になるということは、「誰もがすべてを手探りでやっている」という事実を徐々に理解するプロセスではないだろうか。
大きな企業も、立派な人も、全知全能ではなく、何かを手探りでやっています。
私も子どもの時は、学校の先生は何でも知っていると思っていましたし、大きな会社は何も間違いを起こさずに世の中で動き続けると思っていました。
成長し、高校や大学で勉強し、社会人になってからは、人間や組織というのは意外と完全ではなく、分からないことを抱えながら手探りで生きているとだんだんと感じるようになってきました。
経験を積んで上達してからあれをやろう、と思っているうちに時間がどんどん過ぎてしまいます。
知識や技術がなくても、やりたいことを今すぐにやることで、人生を充実したものにすることができます。
この本では、他にも「人生を生きはじめるための5つの質問」が載っており、限られた時間を精一杯生きるためのヒントにすることができます。
- 生活や仕事のなかで、ちょっとした不快に耐えるのがいやで、楽なほうに逃げている部分はないか?
- 達成不可能なほど高い基準で自分の生産性やパフォーマンスを判断していないか?
- ありのままの自分ではなく「あるべき自分」に縛られているのはどんな部分だろうか?
- まだ自信がないからと、尻込みしている分野は何か?
- もしも行動の結果を気にしなくてよかったら、どんなふうに日々を過ごしたいか?
他にも「有限性を受け入れるための10のツール」も紹介されています。
感想
子育てが始まってから、なかなか自分の時間がとれないとモヤモヤすることも多かったです。
でも、この本を読んでからは、昼寝できずに抱っこしても泣いている子どもを見る時も、通勤の電車を待っている時も、好きなウイスキーを飲んでいる時も(元からですが)、前より人生を楽しめている気持ちになっています。
自分の時間を全てコントロールしようとせずに、気楽に生きていこうと思います。
限りある時間の使い方の読書レビューに限りある時間(2時間くらい)を費やしましたが、これが私のやりたかったことなので、うまく本の内容は実践できていると自負しています。
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